季節のめぐりと食
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発行日: 2020年 01月01日
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季報: 冬 第96号 掲載
住職 及川玄一
明けましておめでとうございます。
年賀状には、年頭にあたり「初春」「迎春」の文字を使います。厳冬期になぜ「春」なのか。
日蓮聖人のお言葉「妙一尼御前御消息」に「冬は必ず春となる、いまだ聞かず、見ず、冬の秋と返れる事を」とあります。四季が巡ることはだれでも知っている、必然であると。教えはその前後にあります。前には「法華経を信ずる人は冬のごとし」、後に「いまだ聞かず、法華経を信ずる人の凡夫となる事を。経文には「『若し法を聞くこと有らん者は、一として成仏せずということ無けん』と、説かれて候」と。
春に始まる季節のめぐりが必然であることをたとえに「厳しくとも、法華経を信ずる人は必ず仏となる」と説かれています。
年賀状は、寒中にあっても春は確実に来ることを書き、この年も四季が滞りなくめぐり、田畑が豊かな実りをもたらすよう願っているのでしょう。命を支える食物の出来不出来は、天候に左右されますから。
お寺では朝食をいただくとき、食への感謝の祈りをお唱えします。「天の三光に身を温め 地の五穀に魂を養う 皆これ本仏の慈悲なり 一滴の水も国恩に有らざる無く 一粒の米も同胞の辛苦によらざる無し 四肢六根この身は全体父母の身なり 我ら今 菩薩道を行じ 安んじてこの飯食を享く 法悦感謝際まり無し 願わくはこれによって慧命を増益し 精進の力を養い 以って信行を成就し 四恩に報謝せん」
三光は太陽・月・星。四肢は両手・両足。六根は眼・耳・鼻・舌・身・意。慧命は智慧。四恩は天地・国王・父母・衆生の恩です。「一年の計は元旦にあり、一日の計は朝にあり」といいます。感謝のことばを唱え朝食をいただくことは、とても大切なことと思っています。
今年も、穏やかに季節が巡り、安心して食事ができる日々が続くよう念じながら勤めます。よろしくお願いいたします。
《日蓮聖人ご生誕八〇〇年》
日蓮聖人は貞応元(一二二二)年二月十六日にお生まれになり、令和三年にご生誕八〇〇年を迎えます。記念すべき年に合わせ本堂、墓地、境内の修繕を主にいくつかの事業を計画しています。詳細は近くお知らせいたしますが、東墓域の塀の修繕工事を優先する予定です。ご理解とご協力をお願いいたします。