継続こそ力なり

発行日: 2020年 02月10日
成子新聞: 第8号 掲載

今月の聖語
受る(うくる)はやすく 持つ(たもつ)はかたし
日蓮聖人御遺文「四条金吾殿御返事」 日蓮宗

継続こそ力なり

住職 及川玄一

 「一念発起」という言葉があります。意を決して1つの事柄に取り組もうと立ち上がるのは大いに良いことです。しかしながらそれ以上に大切なのは、それを継続させることではないでしょうか。

 継続は地味です。飽き易く迷いも起こり不安になりがちです。しかしやり続けましょう。とにもかくにも自分を信じ、このご縁を下さった仏さまを信じてやり続けましょう。

 おのずと結果はついて来るはずです。

日蓮聖人ご遺文『四条金吾殿御返事』
 本書は真蹟は伝わっていませんが『此経難持鈔』との異称があります。その名の通り聖人の檀越で強固な信仰を持つひとりが四条金吾氏でした。しかしその金吾氏にもさまざまな迫害が加わり動揺が生じたのです。それを励ますために与えられたのが本書でありました。
 聖人の教えの肝要は持ち続けること。持つとは継続であり決して手放さないことです。
 法華経信仰にはこの厳しさが要求されます。しかしその先には必ず喜びが待っているのです。
 文永12年(1275) 聖寿 54歳

『日蓮宗新聞』令和元年12月1日号「今月の聖語」より

「受くる」と「持(たも)つ」

 『法華経』には、受持・読誦・解説・書写という5つの修行をするよう説かれています。「受くる」と「持つ」はあわせて「受持」として一つの修行ということです。

 日蓮聖人はこの『四条金吾殿御返事』で「此の経をきゝうくる人は多し。まことに聞き受る如くに大難来たれども憶持不忘の人は希なる也」といいます。

 「受」とは法華経の教えを聞くこと、それをする人は多いけれども、大きな困難がやってくると「憶持不忘」でいられる人はほとんどいない、とおっしゃられます。

 「憶持」とは「心に念じて思い留めること、常に念頭において忘れないこと」、「持」とは自分が開いた(受けた)法華経の教えを忘れないこと、つまり常に自分の信仰を見失わないということでしょう。

「持つ」ことの覚悟

 また聖人は「成仏は持つにあり」、私たちが仏になるためにはこの「持つ」ことにあるとおっしゃられます。

 しかし、それとともに「此の経を持ん人は難に値うべしと心得て持つ也」と、法華経の信仰には困難があること、そのことを覚悟しなければならないことも述べられます。そして、その覚悟の上に「南無妙法蓮華経を念ずるを持つとは云うなり」と、お題目を念ずることを「持つ」ことだとおっしゃいます。

「念ずる」とは

 ところで「念ずる」には、「神仏に対し、災厄から身を守ってくれるよう、願いをかなえてくれるよう心の中で祈る。また、経文や呪文などを心中に唱える」、「常に心にとめて思う。強く願って思い続ける。」という意味があります。法華経の教えを忘れず信じ、お題目を唱えるということが、なすべき実践であるということでしょうが、「念する」には「たえしのぶ、じっとこらえる。我慢する。」という意味もあります。やはりお題目には法華経信仰にともなう困難に向き合うという心構えが大切ということでしょう。

「此経難持」

 この『四条金吾殿御返事』のお手紙は、「此経難持の事」という書き出しで始まります。

  此経難持 若暫持者 我即歓喜
  諸仏亦然 如是之人 諸仏所歎

 この経文はみなさんもお勤めで読まれたことがあるかと思います。

 「この経は持ちがたし、もし暫くも持つ者は我即ち歓喜す。諸仏もまた然りなり。是の如きの人は、諸仏の歎めたもう所なり。」

 このお経文は『法華経』「見宝塔品第十一」の中の経文です。

「この『法華経』を「持つ」ことは難しいことである。もしほんの少しの間でも持つ人がいたならば、わたし(お釈迦さま)は喜び、ほかの仏も同じである。このように法華経を持つ人は、仏がほめたたえる人なのである」と、ほんのわずかな瞬間でも、法華経を持つことができたならば、その行いは大変尊く、その人には仏さまの加護があると説かれているのです。この経文も心に留め、日々精進いたしましょう。

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